貧血

貧血について

貧血貧血とは、血液中の赤血球の数や、酸素を運搬する役割のヘモグロビンの量が不足することによって、全身の組織に血液が十分な酸素を届けられない状態を言います。立ち眩みなどの症状は、一時的に脳の血液量が減少した脳貧血という状態で、赤血球異常の貧血とは異なります。貧血は、男性よりも女性の方が多く見られ、高齢になるほど貧血が増加するとされています。女性は、月経によって血液や鉄分を失うことと、食べ物の嗜好の違いなどが原因として指摘されています。

貧血の原因

貧血の主な原因は、過剰な出血・赤血球の材料不足・血を作る機能の病気・赤血球を破壊する病気の4つが挙げられます。過剰な出血の原因は、主に月経・出産・外傷・消化器がん・潰瘍などがあります。また、若年層に多い鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビンの材料となる鉄不足によって引き起ります。若い女性の4人に1人が経験しているとされています。とくに、妊娠中の女性は、鉄不足に陥りやすく、さらにビタミンB12や葉酸が不足することで巨赤芽球性貧血を引き起こします。
また、血を作る機能の低下を引き起こす病気に、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの骨髄の病気のほか、腎不全などの重症の腎臓病、関節リウマチなどがあります。
赤血球を破壊する病気としては、赤血球やヘモグロビンの構造や免疫系の異常によって、赤血球が通常の代謝よりも早く壊されてしまう溶血性貧血があります。日本人に多い遺伝性球状赤血球症は、本来は円盤状のはずが、赤血球が先天的に球状でもろいため脾臓で壊れてしまう病気です。

貧血の症状

貧血の初期症状として、疲労感・倦怠感・顔面蒼白・動機・息切れなどが挙げられます。症状が進行すると、頭痛やめまい・気が遠くなる・運動中の筋肉のけいれんや胸の痛みなどの症状が現れます。貧血の初期はほとんど自覚症状がなく、運動している時だけ症状が出ることもあり、健康診断で指摘されて初めて分かる場合が多いとされています。
鉄欠乏性貧血の主な症状は、爪が割れやすい・髪の毛が抜ける・肌が荒れる・舌の炎症などが現れます。巨赤芽球性貧血では、手足のしびれ・チクチクした痛みが出現することがあり、進行すると抑うつ症状や記憶障害などの神経症状が加わることがあります。
高齢者の貧血症状として見られるのは、物忘れ症状です。貧血による物忘れは、認知症とは異なるので注意が必要です。

貧血の検査・診断

貧血の診断に一般的に用いられるのは、血液中のヘモグロビン濃度(血色素量)です。WHOの基準では、成人男性が13.0g/dl未満、成人女性が12.0g/dl未満、高齢者(男女)は11.0g/dl未満が貧血と定義されています。赤血球数や全血液量に占める赤血球の割合を示すヘマトクリット値も良く使われます。
貧血かどうかの診断は、自覚症状がなくても健康診断で見つかることも多く、その貧血の原因疾患が何であるかについては、血液中の鉄に関する検査やそのほかの血液検査・便潜血検査などを行うことがあります。

貧血の治療

貧血の治療は、それぞれの原因によって異なります。最も多くみられる鉄欠乏性貧血は、鉄剤の服用によって様子をみるのが通常です。一方で、巨赤芽球性貧血は、ビタミンB12や葉酸の不足によって引き起るので、これらの栄養素を薬で補います。胃のビタミンB12吸収障害を伴う場合は、悪性貧血と呼ばれています。昔は、死に至るほどの病気でしたが、昨今では薬物療法の継続で健常者と変わりなく生活することが可能になりました。消化器がんや潰瘍などで過剰な出血が原因の場合は、それぞれの原因疾患に応じた治療が必要です。
造血機能の病気や赤血球を破壊する病気、重症な貧血は、より専門的な治療が必要となるため、血液内科へご紹介します。

貧血の予防と注意点

貧血予防にいちばん重要なのは、バランスの取れた食生活です。ヘモグロビンの材料となるたんぱく質や鉄分、ビタミン、B12、葉酸が含まれている肉や魚介、大豆、乳製品、ビタミンやミネラルを多く含む海藻や野菜を毎日摂るようにしましょう。
鉄分や葉酸が不足しがちな妊娠中や授乳中は注意が必要です。
鉄欠乏性貧血では、鉄剤など貧血治療薬と一緒に摂取できない飲食物もあるので、担当医師の指示に従ってください。
また、胃の摘出手術を受けた方は、巨赤芽球性貧血を発症する可能性があるので注意が必要です。

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