てんかんについて
突然意識を失ったり、全身のけいれんを起こして、反応がなくなる「てんかん発作」を繰り返し起こす病気です。てんかんの原因や症状は人それぞれで、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発病する可能性があります。てんかんの患者数は日本全体で60~100万人、1,000人に5~8人と言われています。
てんかん発作は、脳の一部の神経細胞が突然異常な電気活動を起こすことによって生じると言われています。
てんかん発作の症状は、基本的に一過性です。てんかん発作が終わると、元通りの状態に回復しているのが特徴です。しかし、てんかん発作が30分以上続くような「てんかん重責発作」は生命的に緊急状態となるため、救急対応が必要になります。脳腫瘍や頭部外傷後遺症など明らかな原因がある場合は、「症候性てんかん」、原因不明の場合は、「特発性てんかん」と称されます。てんかんの大部分の患者さんは、抗てんかん薬の服用でてんかん発作を抑制でき、社会生活を支障なく送ることが可能です。しかし、抗てんかん薬で発作を抑えられない「難治性てんかん」は、複数の抗てんかん薬が必要で、場合によっては脳外科治療など専門的なてんかん治療を行う場合があります。
てんかんのサイン・症状
てんかん発作は、脳のどの領域の神経細胞の異常活動が起こるかによって様々な症状が現れます。例えば、後頭葉の視覚野で起こると、光がチカチカと見えたり、手の領域の運動野で起これば手がピクピクと動きます。側頭葉であれば前胸部不快感や既視感など、発作を起こしながら患者さん自身でも感じるさまざまな症状がおこります。
また、電気発射が脳全体に広がった場合は、本人の応答がなくなり、倒れ込んで全身を痙攣させるなど、患者さん自身は意識がなくなり、周囲が全く分からなくなります。身体の一部または、全体が一瞬ピクンと動くミオクロニー発作や、突然身体の力が抜けて倒れる脱力発作、手足や口をモソモソと動かす自動症などの発作もあります。
てんかんの診断と治療
てんかんは、一度診断されると長期にわたって服薬を必要とすることが多いので、初期の診断時には、本当にてんかんなのか、ほかに原因がないのかをよく見極める必要があります。脳波やMRI検査などによりてんかんの診断を進め、その上で長期的な治療の見通しを立てていきます。
てんかん発作で意識が消失する症状は、患者さんにとって社会生活を送る上で大きな障害となります。事故にあう危険性はもちろん、就学や就労、または自動車の運転などを行うに際して大きなハンディキャップとなってしまいます。
てんかんの治療は、発作をいかに消失または抑制するか、或いは意識消失を伴う発作の回数をいかに減らせるかが主な目標となります。
具体的には、抗てんかん薬の調整を行い、自己判断で薬を中断しないことが、発作を防ぐ上で非常に重要です。また、生活が不規則にならないよう、睡眠不足を避けることも大切です。
てんかんをもつ人へのケア
てんかん患者さんは発作が起きていない大半の時間は普通の社会生活を送ることが出来ます。従って、てんかんを持つ人が自分の能力を発揮する機会を失うことのないよう、周囲の人が病気の特性をよく理解して、過剰に活動を制限しないことが大切です。また、てんかんを持つ人は、小児では発達や就学時、成人では就労時や自動車運転、女性では妊娠と出産・育児と生活上のさまざまな問題に対するケアを必要としています。さらに、発作の止まらない患者さんには、繰り返すてんかん発作による脳機能障害や心理面、社会面の障害に対するケアも大切です。
てんかんを持つ人が社会において、自分らしく生きるためにも、さまざまな福祉制度を活用することも求められています。