頭痛の治療・予防
「こわくない頭痛」と「こわい頭痛」
日々忙しく生活している多くの方々が、何らかの頭痛を経験していると思います。 生活に支障のないかるい頭痛、仕事や家事に影響が出てしまうきつい頭痛、すべてを放り出して寝込んでしまうほどの激しい頭痛・・・いずれにしても、いつの間にか良くなってしまうので「頭痛なんてそんなもの、まぁ大丈夫だろう」と思っていませんか?
確かに多くの頭痛はいわゆる「こわくない頭痛」ですが、なかには大変な病気の前兆や症状である「こわい頭痛」の可能性があります。 「こわくない頭痛」は比較的ゆっくりした対処で間に合います。しかし、「こわい頭痛」はくも膜下出血などの脳卒中に代表される危険な原因が潜んでおり、生命がおびやかされ重篤な後遺症を残す可能性のある頭痛です。では、どのような頭痛が「こわい頭痛」なのでしょうか? 一概には言えませんが、次に示すような特徴がある頭痛は要注意です。
注意が必要な頭痛(こわい頭痛)
下記のような頭痛の場合は、脳の病気が原因の場合があるため、早急に医療機関を受診しましょう。
- 「突然」「今まで経験したことがない」「いつもの頭痛と様子が異なる」頭痛
- 「頻度と程度が増していく」頭痛
- 「50歳以降に初発」の頭痛
- 「神経脱落症状:言語障害・視野障害・運動/感覚障害など」を有する頭痛
- 「癌や免疫不全のある方」の頭痛
- 「発熱・髄膜刺激徴候—首が前に曲がりにくいなど」を有する頭痛
こわくない頭痛
「こわくない頭痛」とは言っても、頻繁に生じて生活に影響を及ぼしてしまう頭痛にはきちんとした対処が必要になります。
「市販の頭痛薬で良くなるし、それさえ飲めばなんとか大丈夫!」と思っている頭痛持ちの方が、いつの間にか薬物乱用性頭痛といった「やっかいな頭痛」持ちの方へ変貌を遂げてしまうこともありますので、安易な頭痛薬の使用には充分に注意しなければなりません。
頭痛の種類
頭痛以外に特に目立った症状のない一次性頭痛(こわくない頭痛・慢性頭痛)と何か病気があり、その症状の1つとして頭痛がみられる二次性頭痛(こわい頭痛)の2つに大きく分類されます。
一次性頭痛(こわくない頭痛)
片頭痛
- 脈打つようなズキンズキンとした痛みが特徴。
- 片側性が多い
- 数時間から2-3日の持続
- 吐き気や嘔吐を伴う場合もある。
- 音や光に敏感になる場合もある。
- 痛みの前兆として、視野がチカチカする、星型のものが見える、視野が狭くなる場合がある。
- 比較的女性に多い。
緊張型頭痛
- 頭の両側から何かで締め付けられるような痛み。
- 数十分から数日の持続
- 午後から夕方に出現し増悪することが多い。
- 悪心・嘔吐は伴わない。
- 音や光に敏感になる場合もある。
- 後頭部から側頭部に鈍痛を感じる。
群発性頭痛(珍しい頭痛です)
- 頭部の片側や目の奥が、「えぐられるような」「焼けるような」激しい痛み。
- 数日から数か月続き(群発期)、その後寛解する。
- 目の充血、涙、鼻水、鼻づまりを伴う。
- 就寝後や朝方に生じやすい、飲酒で誘発
- 比較的男性に多い(75~90%)、20~40歳に初発
二次性頭痛(こわい頭痛)
脳の病気などが原因となり起こる頭痛です。代表的な病気をご紹介いたします。
くも膜下出血
- 今までに「経験したことのない」激しい頭痛
- 今までで「最悪」の頭痛
- いつもの頭痛と明らかに違う
解離性脳動脈瘤
- 血管が裂けることによって頭痛が起きる!
- 急に起きる頭痛、顔面痛、頸部痛
- 痛みは1か月以内に寛解
- 脳梗塞やくも膜下出血を合併することも
脳腫瘍
- 慢性進行性、早朝時頭痛
- 吐き気のない突然の嘔吐
- けいれん発作、神経局所症状(言語障害、視野障害、運動障害など)
脳脊髄液漏出症(脳脊髄液減少症/低髄液圧症候群)
- 頭頚部の外傷、いきみ・咳込み、しりもちなどで発症
- 「起立性」の頭痛-立ったり座ったりして15分以内に頭痛が起きる
- 耳鳴り・難聴、嘔気、光過敏などが伴う
薬物乱用性頭痛
- 片頭痛と緊張型頭痛が混在した型
- 1か月に15日以上頭痛が存在する
- 1種類以上の頭痛治療薬を3か月を超えて定期的に乱用している
- 他の頭痛疾患がない
ホメオスターシス*の障害による頭痛
- 高山病、睡眠時無呼吸症候群、潜水(低酸素血症、高炭酸ガス血症によるもの)
- 飛行機搭乗中に起きる頭痛(気圧変動によるものと考えられている)
- 絶食による頭痛
- 低血圧、透析頭痛、高血圧性脳症 など
*生体が外的および内的環境の変化を受けても、生理状態などを常に一定範囲内に調整し、恒常性を保つこと
眼科・耳鼻咽喉科に関連する疾患による頭痛
- 急性緑内障発作
- 副鼻腔炎/蓄膿症
生活スタイルに合わせた頭痛の治療・予防
生活スタイルに合わせた頭痛の治療・予防生活に密着した「こわくない頭痛」や生命をおびやかす「こわーい頭痛」も、生活習慣の乱れに起因する側面があるものと考えられます。不規則な生活、睡眠不足、過重な労働や家事、運動不足、パソコンやスマートフォンの長時間使用など、いずれも慢性的な頭痛の原因になり得ます。そういった意味では頭痛も生活習慣病の一つなのかもしれません。
「少しでも現在の頭痛をどうにかしたい」「かるい頭痛だけど放置していていいのかな…?」「今の頭痛薬で大丈夫なのかな…?」などと思っていらっしゃる方々は、ぜひ当クリニックへ一度ご相談下さい。たかが頭痛、されど頭痛…安心できる生活を健やかに、そして万一手遅れになることのないよう適切な判断と投薬治療のお勧めだけではなく、生活のアドバイスを含めサポートしたいと思います。
頭痛の原因、誘発因子を追究
頭痛に関して詳しい問診を行うことで、総合的に頭痛の原因を探していきます。
痛みをとる治療だけではなく、頭痛の誘発因子を分析し、頭痛を予防することにも注力します
鎮痛薬と予防薬を正しく使用
お薬の飲みすぎによって「薬物乱用頭痛」になる場合があります。
頭痛が起きていない時に、鎮痛薬を予防的に服用することはしないようにしましょう。
頭痛を予防したい方は、医師が処方する予防薬を服用するようにしましょう。
とくに、片頭痛治療は近年飛躍的な進歩を遂げています。これまでの内服の予防薬に加えて、1ヶ月に1回行う注射の予防薬(「エムガルティ」「アジョビ」「アイモビーク」)という選択肢もあります。
毎月の通院が難しい方や、休暇や出張などで期間があいて心配な方には、自宅で自己注射を行うことや、3ヶ月に1回(3本)の注射予防薬をお勧めしております。
服用のタイミングを指導
頭痛に効果のあるお薬は、服用のタイミングが大切です。
どのタイミングで服用するのがよいのかを相談させていただきますので、自分にあったタイミングを見つけていきましょう。
生活習慣の見直し
生活習慣を見直して規則正しい生活をすることで、頭痛の回数はかなり減らせるようになります。
頭痛を引き起こしやすい食事、頭痛になりやすい睡眠などを知ることが、頭痛予防の大きな一歩です。